講演レポート

バイエル薬品 大動物シンポジウム 2017
情報提供

「牛用バイコックスの情報提供」

バイエル薬品株式会社 動物用薬品事業部 学術/岩田 隆

コクシジウム病の発症防止に特化したバイコックスの有用性

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スライド1:牛用バイコックスのコンセプトイメージスライド1:牛用バイコックスのコンセプト スライド2:コクシジウム病の子牛増体に対する悪影響イメージスライド2:コクシジウム病の子牛増体に対する悪影響 スライド3:マウスにおける再感染抵抗性確認試験イメージスライド3:マウスにおける再感染抵抗性確認試験 スライド4:再感染抵抗性:牛イメージスライド4:再感染抵抗性:牛 スライド5:子牛のオーシスト排出イメージスライド5:子牛のオーシスト排出 スライド6:導入子牛のオーシスト排出イメージスライド6:導入子牛のオーシスト排出 スライド7:導入子牛のオーシスト排出イメージスライド7:導入子牛のオーシスト排出 スライド8:バイコックスの投薬タイミングイメージスライド8:バイコックスの投薬タイミング

牛用バイコックスは、発売から9年経っている製品だが、もう一度簡単に見直してみる。
コクシジウム病が発症する段階では、すでに腸管の粘膜上皮は損傷を受けている(スライド1)。そのためバイコックスは発症防止に特化し、生産性を極力落とさないことを目指している。特に若齢牛になればなるほど重症化しやすく、発育停滞も起こしやすい。3ヵ月齢以内の若齢牛のコクシジウム病をしっかり防止することがバイコックスのコンセプトである。

こちらは、コクシジウム病の子牛増体に対する悪影響を示す海外のデータ(スライド2)。若齢牛に50,000個のオーシストを5日間、経口感染させた試験牛は、数週間にわたって発育が鈍くなる。その後は成長するが、感染なくスムーズに伸びていった牛と比べて、長期間にわたり体重の差を取り戻せなかった。現場においては様々なファクターがあると思うが、やはり若齢の段階で大きな損失を起こすと、後々の発育には大きな悪影響がある。早い段階でのコクシジウム病の発症防止をしていくことが重要だ。
バイコックスは、抵抗力の弱い若齢牛に対し、トルトラズリルとして15mg/kgを最適なタイミングで投与することで、オーシストの排出を4週間、コクシジウム病の発症を6週間以上抑制し、なお且つ宿主の再感染抵抗性を阻害しないことを開発目標としている。
子牛の体内においては、有効成分のトルトラズリルだけではなく、代謝産物であるトルトラズリルスルホンも強い抗コクシジウム活性を持っている。バイコックス投与後コクシジウムオーシストが再び糞中に排泄され始める時期から想像すると、バイコックスを15mg/kgで投与した場合、両物質の作用によって、腸管粘膜上皮細胞内では抗コクシジウム活性を発揮するだけの濃度が、7~10日程度維持されているのかもしれない。

2012年のバイエル大動物シンポジウムで堀井洋一郎先生が講演された、マウスにおける再感染抵抗性確認試験を簡単に紹介する(スライド3)。①の経口感染試験では、タイミングを変えてトルトラズリルを投与した全ての群でコクシジウム病の発症防止とオーシストの排出が減少し、抗コクシジウム活性が見られた。さらにトルトラズリルの活性がなくなった時期である感染21日後、コクシジウムを再感染させた攻撃試験でも、トルトラズリル投与群はオーシストの排出数が非常に少なく、どの投与タイミングにおいても再感染抵抗性が得られていた。(※トルトラズリルのみを投与したマウスに投与21日後、コクシジウムを人工感染させたところ、無処置の初感染マウスと同様のオーシスト排泄を示したことから薬効はなくなっていると判断した)

牛群の再感染抵抗性について、E.bovisを抽出した海外のデータを紹介する(スライド4)。個体の糞便検査の結果、群編成14日目にバイコックスを投与した群は、その後OPGは低く推移し、4週間目くらいからポツポツと出始める。ただし、このオーシストのOPGは無投薬対照群のそれと比べても差がなく、再感染抵抗性が得られていたと言える。

Eimeriaの初感染において、ほとんどの個体がOPGの単峰性のピークを示すことを堀井先生が発表されている(スライド5)。これは初感染後に再感染抵抗性を獲得していることの証左である。個体の中には長期間高いOPGを排出した個体もいたが、継時的に優勢種が変化しており、個々の種類で見ていくと単峰性を示していた。

実際の畜産現場においては、市場や他農場から導入した場合や、同一農場内でも単飼から群飼にした場合など、いろいろなパターンがあるだろうが、群編成後の個体ごとのOPGを見ていくと、排泄ピークが個体により大きくバラつく(スライド6)。当然ながら群編成する前からお腹の中にコクシジウムを持っている個体や編成後に感染する個体もいるので、出てくるピークがズレるのは一般的なことである。

2013年のバイエル大動物シンポジウムで山下祐輔先生が講演の中で、再感染抵抗性を獲得するためには、ある程度の感染圧力を要するため、抵抗性獲得に必要なコクシジウムの感染量が多い時期に投薬するのが良いと述べている。バイコックスの投薬時期の目安としては、下痢の好発時期の1週間前。しかし個体によって若干バラツキがあるので、好発時期には幅がある(スライド7)。このような際にも、長期に効果が持続するバイコックスは有利であると考えられる。というのは、トルトラズリルにより全てのコクシジウムを殺滅しても、粘膜上皮細胞内に虫体の残骸があれば再感染抵抗性がある程度得られるのではないかと思われる。現場においては常に環境からオーシストが持続感染している。バイコックスを使っても、消化管腔内では虫体は死なないので、継続的にスポロゾイトが腸管粘膜上皮に感染して死滅し、抗原として蓄積されていくと考えられる。一方、薬効の短いものだと、薬効が切れた後、継続的にコクシジウムが再感染し、発育するため、十分な感染圧力がなかった個体に関してはその後発症する可能性がある。

バイコックス投与タイミングのイメージ図がこちら(スライド8)。第1シゾントが崩壊し、虫体数の多くなった第2シゾゴニー辺りが投薬適期だろうと考えられる。しかしながら、バイコックスは長期間薬効が持続するので、多少投薬時期がズレてもコクシジウム病の発症防止効果とともに、強い再感染抵抗性も獲得しうると考えられる。群飼育においては作用時間の短い薬物では発症防止と再感染抵抗性獲得が十分にできない個体の割合が高くなると考えられるが、バイコックスは、個体ごとのコクシジウム感染のバラツキに対しても十分対応できる薬剤だと言えるだろう。

まとめ
  • コクシジウム病は発症する段階で、すでに腸管粘膜上皮が損傷を受けており、若齢牛ほど大きな影響が出やすいため、3ヵ月齢以内の子牛の発症防止が重要である。
  • コクシジウム病は子牛の増体に対し、長期にわたり大きな悪影響を与え、同条件で飼育した場合、体重の差を取り戻すことは困難である。
  • 牛用バイコックスは、抵抗力の弱い若齢牛に対し、トルトラズリルとして15mg/kgを最適なタイミングで投与することで、オーシストの排出を4週間、コクシジウム病の発症を6週間以上抑制し、宿主の再感染抵抗性を阻害しない。
  • Eimeriaの初感染において、ほとんどの子牛個体がOPGの単峰性のピークを示すことから、初感染後に再感染に対する抵抗性を獲得すると言える。
  • 同じ牛群内であっても、個体により感染時期、投薬適期は異なるため、バイコックスのように効果の長い薬剤の方が再感染抵抗性獲得に有利だと考えられる。
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