講演レポート

バイエル薬品 大動物シンポジウム 2017
海外情報提供

「子牛の腸管の発達と初乳の重要性」

カナダ サスカテューンコロストラム社 学術部/Dr. Michael Nagorske

IgGをはじめ新生子牛に必要な物質を含む初乳が経済的損失をも防ぐ

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スライド1:初乳とはイメージスライド1:初乳とは スライド2:新生子期:死亡リスクを低下させる受動伝達量は10g/Lイメージスライド2:新生子期:死亡リスクを低下させる受動伝達量は10g/L スライド3:適正な受動伝達を確保することの経済的側面イメージスライド3:適正な受動伝達を確保することの経済的側面 スライド4:「適正」以上および生後60日以上の受動免疫伝達の経済的側面イメージスライド4:「適正」以上および生後60日以上の受動免疫伝達の経済的側面

子牛の成長段階は、生後24時間以内の新生子期と、生後1~3週間の後新生子期に、大きく分けられる。胎児型腸細胞は、生後24時間の高分子体の吸収に関与し、腸管において抗体等を吸収する役割を担うが、24時間後にはその細胞間隙が閉じ、成熟消化管のための成人型腸細胞へと1~3週間かけて発達していく。腸閉鎖後は高分子体の吸収効率が下がるため、初乳の給与タイミングは非常に重要である。

初乳には子牛の成長に必要な物質が多種入っている(スライド1)。IgGが85~90%と最も多く、なかでもIgG1がその80~90%を占めている。IgG1は肺や腸管内に再分泌される重要な免疫グロブリンである。

また、質の高い初乳中には、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ライソザイムなど、非特異抗菌因子が多く含まれている。これらは新生子牛の健康維持と成長に非常に重要な存在である。

血中IgG量が低値の場合、受動免疫伝達不全(FPT)となる。新生子期の死亡リスクを低下させる受動伝達量は10g/L。これはアメリカNAHMSの未経産牛評価プロジェクトで設定されたもの。それより少ないと死亡率は60日までで4倍にも達している(スライド2)。

経済的な問題として考えるとどうなるか。複数の研究を合わせ総合的に見ると、離乳までにFPTが起こった場合、日本円で平均すると、乳牛で約8,600円、肉牛で約11,000円かかることになる(スライド3)。

充分な受動免疫が伝達されていない個体の場合、生後60日以上になると168,000円相当の損失が出る(スライド4)。これは酪農家にとって大きなロス。初乳管理はこれだけ経済的インパクトがある。

FPTを防ぐためには初乳代用製品でIgGを安定供給することも重要

スライド5:子牛におけるIgG1の受動免疫伝達の主要決定因子イメージスライド5:子牛におけるIgG1の受動免疫伝達の主要決定因子 スライド6:接種IgG量が受動伝達量を決定するイメージスライド6:接種IgG量が受動伝達量を決定する スライド7:AEA(見かけの吸収効率)とは、給与量に対する吸収された免疫グロブリン量であるイメージスライド7:AEA(見かけの吸収効率)とは、給与量に対する吸収された免疫グロブリン量である スライド8:初乳製品中の総免疫グロブリン量により受動輸送量が予測できるイメージスライド8:初乳製品中の総免疫グロブリン量により受動輸送量が予測できる スライド9:受動輸送の量は給与する生後の時間で変わるイメージスライド9:受動輸送の量は給与する生後の時間で変わる スライド10:受動輸送の量は、初乳のIgG濃度によって変わるイメージスライド10:受動輸送の量は、初乳のIgG濃度によって変わる スライド11:確実なIgG量の確保は難しい。なぜなら初乳IgGの濃度と量は母牛毎に大きなばらつきがあるからである・・・イメージスライド11:確実なIgG量の確保は難しい。なぜなら初乳IgGの濃度と量は母牛毎に大きなばらつきがあるからである・・・

子牛における受動伝達の主要決定因子としては、給与するIgG量、給与の迅速性、初乳IgGの質、清浄性などが挙げられる(スライド5)。

給与量について、以前はIgG100g/Lを達成すれば十分だと考えられていたが、実は150~200g/L必要であると報告されている。個体に変動があるため、IgGのレベルを達成できない動物が多く出てくるからだ(スライド6)。初回給与は体重の10%、すなわち典型的な子牛43kgに対し3.8Lが推奨されている。

AEA、見かけの吸収効率について話したい。給与量に対する吸収された免疫グロブリン量のことである(スライド7)。IgGは体に100%吸収されるわけではなく、実際は総給与量の1/3だけが吸収されると言われている。給与量を増やすことで血中の抗体量を十分に確保することが必要である。

初乳製品中の総免疫グロブリン量により、受動輸送量は予測できる(スライド8)。血清中の免疫グロブリンレベルを維持することにより、血清グロブリン量は上がり、吸収の効率、AEAは下がっていく。

受動輸送の量は、給与する生後の時間によって変わってくる(スライド9)。生後すぐであれば最も高い吸収レベルを示し、血中の抗体濃度が高くなる。しかし時間とともに腸細胞が吸収できなくなり、吸収レベルは下がっていく。

また、受動輸送の量は、初乳のIgG濃度によって変わる(スライド10)。給与量が同じ場合、濃度を上げていくと、受動輸送のレベルが上がっていく。受動輸送を考えたとき、IgG濃度50g/L以上の初乳給与が必要だと分かる。

どういった要素が初乳の品質に影響を与えると考えられるか。一つは、妊娠中の母牛への栄養。影響はないという報告も多いが、低品質の飼料は初乳の量やIgGの量を減少させたという報告もある。また、乾乳期が21日以下と短い場合、抗体が十分に濃縮されていないということが往々にしてある。もう一つの要素として、温度ストレス。20年にわたり年10万検体以上に対し行われた個体初乳検査では、夏季はIgG濃度が20%以上も下がることが分かった。ノルウェーからは、12月から2月の間は初乳中のIgG濃度が有意に減るという寒冷ストレスの影響も報告されている。

初乳IgGの濃度と量に関しては、母牛ごとにかなりバラつきがある(スライド11)。30~50%の初乳は50g/Lという低品質のものだ。特に初産の牛に関しては産乳量が少なく、50%は4L以下となる。だからアメリカの農場の多くが初乳サプリメントを使っている。

代用初乳製品、初乳サプリを使う理由は、個々の母牛による初乳品質のバラつきや変動、季節変動、気候条件、不衛生、疾病伝播のリスク、タイミング、供給量など、いくつもある。良質な初乳を確保できない農場もたくさんある。相当変数が大きいものなので、安定させるために代用初乳製品の使用が効果的であるといえる。

初乳を原料とし、脱脂をしていない代用初乳製品こそが効果的

スライド12:血液由来製品のIgG組成は初乳とは異なるイメージスライド12:血液由来製品のIgG組成は初乳とは異なる スライド13:ヘッドスタートの品質管理イメージスライド13:ヘッドスタートの品質管理 スライド14: 変動の排除:SCCL製品が提供するIgG量は信頼できるイメージスライド14:変動の排除:SCCL製品が提供するIgG量は信頼できる スライド15:初乳製品を給与された子牛はより均一な抗体レベルを示すイメージスライド15:初乳製品を給与された子牛はより均一な抗体レベルを示す スライド16:初乳の少量給与においては哺乳瓶給与とチューブ給与で受動輸送量に違いがあるイメージスライド16:初乳の少量給与においては哺乳瓶給与とチューブ給与で受動輸送量に違いがある

初乳製品に何を求めるべきか。まずは初乳そのものが原料だということ。血清やホエイ由来の調整乳が多いので気をつけてほしい。それから脱脂していないもの。脂肪中に含まれる非特異的抗菌物質が摂れなくなる恐れだけでなく、褐色脂肪の生成がうまくいかないこともある。また、品質の問題として、牛由来IgGが50g/L以上にならなければいけない。

アメリカで使われている多くの初乳製品は、初乳ではなく血清やホエイを原料としている。そのため、初乳脂肪、成長因子、代謝因子、非特異抗菌因子のいずれも含まれず、低いIgG吸収しか望めないうえ、IgGの半分はIgG1ではない。

たとえば、アメリカで発売されている血液由来製品のIgG組成は初乳とは異なる(スライド12)。IgG1と2の比率が違うのである。IgG1は腸管、呼吸器に再分泌されるIgGだと先にも述べたが、IgG2にはその特性がない。病原菌、呼吸器疾患から子牛を守るには、IgG1を適正量、確保しなければならない。

一方で、ヘッドスタートは良質な母牛初乳を原料とした初乳粉末製品である。IgGを26%超、脂肪を15%含み、1袋(225g)を1L未満に溶解すれば、IgG は60g/L以上となる。初乳の代わりとして、出生後1~2時間で、一部の和牛のように体重の軽い子牛には1~2袋、それより体重の重い子牛には2~3袋給与するといい。さらに出生後6時間で、1~2袋を追加給与するのが理想的だ。こうすることで90%以上の子牛の受動免疫伝達を担保できる。

製品の安全性、有効性および効力を保証するための品質管理検査も厳密に実施している。病原体はもちろん、抗生物質やその他の毒素の混入がないこと、IgGの定量検査、すなわち抗体の生物活性も確認している。これらに関し、カナダ、アメリカ、メキシコを含む連邦諸官庁の動物用生物製剤部局による規制と査察を受けている(スライド13)。

初乳製品を使う目的として、即時給与できる利便性がある。それからもう一つ、個体のバラつきをなくすこと。第三者機関の研究だが、免疫の受動伝達性効率を確認したところ、ヘッドスタート2袋なら平均で12mg/mL、3袋にすれば17 mg/mLを達成し、10mg/mLのラインをクリアしていた(スライド14)。

呼吸器系のBRSV(牛RSウイルス)の抗体価の平均を確認したところ、母牛初乳だと抗体価にバラつきの範囲が相当あるが、ヘッドスタートを給与した子牛はより均一な抗体レベルを示した(スライド15)。

また、受動輸送の量は、初乳の給与量だけではなく給与方法からも影響を受ける。哺乳行為は食道溝の閉鎖を刺激してルーメンへの流入を阻止し、第四胃の吸収面への早期接触を促すため、胃に直接チューブで入れるよりも、哺乳瓶を使ったほうが良い。

血清IgG濃度に関して見ても、1.4Lという少量給与であった場合、哺乳瓶での給与は12.4g/L、チューブでは9.7g/Lという群間差がついているので、哺乳瓶給与のほうが良いと言える(スライド16)。しかしIgG200g、つまり2.8Lの場合には群間差がついていない。これはチューブでの給与は可能ではあるが、それには十分な量が必要であることを示している。

腸管にある4層の防御機構は適切な初乳給与によってサポートされる

スライド17:腸管に存在する4つの主な層と共生細菌イメージスライド17:腸管に存在する4つの主な層と共生細菌 スライド18:後新生子期:どのように疾病を軽減して胃腸の健康を増進するべきかイメージスライド18:後新生子期:どのように疾病を軽減して胃腸の健康を増進するべきか

腸管には4つの主な層が存在している(スライド17)。まず共生細菌が生息している微生物のバリア。出生後、最初の1~3週間で常在菌が生着していくため、早期の段階で善玉菌が十分に生着していることが必要となる。次に化学的なバリア。さまざまなバクテリア叢があり、デフェンシン、リゾチーム、IgAの分子にもこのバリアが関わってくる。そして物理バリア。腸細胞の細胞間は出生後、時間が経つと密接な結合となっていく。それにより病原体の移動に対するバリアが形成され、微生物がこの層から血流へと移行しないようにブロックする。そして最後が、免疫学的なバリア。このバリアに、たくさんの樹状細胞や抗原提示細胞等が存在している。

これらの4層はすべて、出生後1~3週ぐらいまで、十分に整っておらず、バリアが機能していない。NAHMSによれば、1993~2007年において初産牛の子牛の生後48時間から離乳までの死亡率は全国で7.8~10.8%となっている。つまり出生後3週間は死亡率が高く危険な時期だと言える。

後新生子期に、どのように疾病を軽減して胃腸の健康を増進するべきか。初乳のさまざまな成分は、すべて因子として影響していると考えられ、各消化管の層の防御機構に寄与している(スライド18)。

生後1日目以降の代用初乳給与が各種症状スコアや抗生物質使用率を大幅に削減

スライド19:「1日目以後」の代用乳への初乳補給イメージスライド19:「1日目以後」の代用乳への初乳補給 スライド20:「生後1日目以後」の代用乳への初乳補給イメージスライド20:「生後1日目以後」の代用乳への初乳補給

生後1日目以降において、20gのIgG、すなわち150gの代用初乳を1日2回、14日間給与すると、どれだけ効果があるか。試験の結果、対照群と比較して、糞便スコアが85%、呼吸器スコアは64%、抑鬱スコアは79%、臍帯スコアは72%低かった(スライド19)。アメリカでは抗生物質の過剰使用という問題があるが、代用初乳を使うことにより、子牛への抗生物質使用率は18.8%であったのに対し、対照群は76.5% であった。

カリフォルニアにある3カ所の子牛育成農場で最初の14日間、子牛600頭に10g の初乳IgGを1日2回給与した結果、対照群と比較して下痢の発症が有意に低かった事例もある(スライド20)。

ヘッドスタートは生後1日目以後にも使用できる。子牛に腸の健康に各段階で必要なサポートを提供する、清潔で一貫した供給方法だと言えるので、うまく活用していただければと思う。

まとめ
  • 死亡リスクを低下させる受動伝達量はIgG 濃度10g/L以上であり、それより少ないと死亡率は60日までで4倍にも達する。
  • 初乳IgGの濃度と量は母牛ごとに大きなバラつきがあるため確実なIgG量の確保は難しいが、良質な母牛初乳を原料とした初乳粉末製品であるヘッドスタートを給与した子牛はより均一な抗体レベルを示し、90%以上の子牛の受動免疫伝達を担保できた。
  • 腸管に存在する4つの主な層は、出生後1~3週ぐらいまで十分に整っていないが、初乳を使うことによって、バリア機能に効果を発揮することが可能である。
  • 生後1日目以降の代用初乳給与により、対照群と比較して、下痢、呼吸器、抑鬱、臍帯の各スコアに加え、抗生物質使用率も低かった。
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