牛コクシジウム症は、子牛において未だに発症の多い疾病であるが、近年、トルトラズリル製剤(バイコックス)の使用により、顕著な予防効果を認めている。では、発症した子牛に対し治療として用いた場合、どれほどの効果があるのであろうか。効能外使用ではあるが、サルファ剤を用いた従来の治療方法と比較検討を行った。
2009年5月から2010年10月、鹿児島県北薩地区において、血便を呈し、牛コクシジウム症と仮診断した黒毛和種子牛28頭を、サルファ剤群(S群)16頭、トルトラズリル製剤群(T群)12頭に振り分け、治療対象牛として供試した。S群はスルファジメトキシン注射製剤とスルファモノメトキシン・オルメトプリム経口用合剤、T群はトルトラズリル製剤を用いて治療を行った。なお両群とも、併用薬については、同条件となるよう設定した。 コクシジウム原虫の検査として、発症時、発症後3日、7日、14日、28日に直腸便を採材し、OPGならびに種別検査を行った。なお、発症時の糞便検査結果と臨床症状によりコクシジウム症と診断した。また、発症日から7日までの毎日、14日後、28日後に対象牛の各臨床パラメーターをスコア化し、その推移を確認した。
S群、T群ともに、発症時の糞便検査ではE.zuerniiが高率に検出され、その平均OPG値は、S群で約570,000、T群で約1,120,000であり、T群のOPG値が高い傾向にあった。治療後のOPG値は、両群とも3日後には著しく低下し、以降も低値で推移した。なお、両群とも発症時と治療後すべての区間に有意差を認めた。 糞便性状は、両群とも治療後、経時的に改善が見られた。血便性状は、発症時のスコアに若干差があったものの、両群とも糞便性状同様、経時的に改善が見られた。その他、被毛性状、脱水の程度、活力、食欲のスコアは、有意差等は認められてはいないが、S群において若干高い傾向にあった。これは、トルトラズリル製剤投与による症状の速やかな改善(スコア低下)に反映された結果と推察された。 治療対象牛の平均治療日数はS群5.3日、T群4.6日であり、トルトラズリル製剤によるコクシジウム症の治療は、従来の治療法と比較しても遜色なく、むしろ発症時のOPG、血便性状を考慮すると、従来法を凌ぐ結果ではないかと思われた。また、サルファ剤は長期使用による腎障害を惹起する可能性があり、子牛に対する安全性の面で不安がある一方、トルトラズリル製剤は現在のところ、副作用の報告がない点にも注目したい。なお、トルトラズリル製剤の人工哺乳子牛への投与では、注射筒を持っていけば自分で吸ってくれる場合もあり、嗜好性も悪くはないと思われた。また、1日あたりの治療コスト(保険適用薬価として)を計算したところ、サルファ剤による治療コストは2,160円、トルトラズリル製剤は2,150円であった。